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Perspective

米国 FAST 法 - 自動車部品リコールアンダーライティングに迫る難しい傾向

March 03, 2016| By Shinichi Kitazawa | P/C General Industry | Japanese | English

Region: Japan

近年、日本において自動車部品のリコール保険の需要は高まっています。任再を提供する再保険会社として、自動車部品のリコールの任再サポートに関するお問い合わせを数多く頂きます。しかし、実に多種多様な製品が存在するため、この分野のアンダーライティングは大変難しいものです。リコール保険のアンダーライターは、技術的な進歩だけではなく、各国の規制動向に常に着目していなければなりません。なぜなら、今日多くの自動車部品のリコール保険の適用地域は全世界であり、各国の規制動向はリコールの性格に影響を与える可能性があるからです。

保険料率の計算は発生確率と想定コストに基づいています。発生確率は過去の実績に基づいているので、未来を想定できるものではありません。米国では2015年に多数のリコールが行われました。その中でも特に顕著なケースは複数の自動車メーカーによって行われたエアバッグのリコールでした。2015年のリコールの増加は、単に一時的な意識の高まりに影響されたものなのか、あるいは、リコールの頻度に関する“新しいスタンダード”を示唆すものなのか、判断することは難しいものです。もし、後者であれば新しい発生確率を予測する必要があるでしょう。

2015年末に成立したアメリカ陸上交通修復The Fixing America’s Surface Transportation Act - FAST 法)は、一時的な意識の高まりを超えた“新しいスタンダード”に拍車をかけることになると考えられます。FAST法は、数年にわたり 3,050 億ドル (約30兆円)を陸上交通ネットワークに投資し、道路および鉄道のネットワークを改善し、次世代のハイテク自動車をサポートするために必要となるインフラストラクチャーを整備するというものです。

この米国の法律は、米国で販売される自動車のリコールに多大な影響を与える可能性がある 2 つの要素を含んでいます。日本の自動車部品の多くは、部品そのものとして米国に輸出されるか、日本で自動車に搭載され米国に輸出されています。したがっ て、この法律は日本における自動車部品のアンダーライティングに重要な意味を持つことになります。

  • 現行の米国規制は、自動車メーカーに対して販売した車両の安全性を最長で10年間管理することを要求しているのに対し、FAST法では15年間の管理が求められます。この期間の延長は、リコールされる自動車の台数を潜在的に増加させる可能性を持っています。
  • 現行の米国規制は、製品安全性の管理を怠った場合、個々のケースごとに 3,500 万ドル (約35億円)の罰金を課すのに対し、FAST法ではこの罰金が 1億500万ドル(約105億円)に引き上げられます。自動車産業の製品安全への取り組み強化を後押しするための変更ですが、この罰金額引き上げによっ て、自動車メーカーが罰金の支払いを回避するための行動を取る可能性が高くなると考えられます。


しかし、真のチャレンジはこれらの変更がドライバーアシスト技術の普及という新しい時代の到来に向けて起こっているという点でしょう。ドライバー アシスト技術は新しい技術であり過去の経験値は十分ではなく、特に、部品のリコール発生確率データという点において、ほとんど未知のエリアなのです。

また、ドライバーアシスト技術の大半は、ハイテク電子製品を採用しており、これらの製品に設計上の瑕疵があった場合には重大な問題を引き起こす可能性があります。保険を設計・引受けする場合、あくまでも比較論ですが、リコールアンダーライターが PML/MFLを算出するに当たって、製造上の欠陥のほうが、設計上の欠陥よりも容易であるといえます。ドライバーアシスト技術の進歩は、リコールアンダーライターが設計上の欠陥により発生するPML/MFLの算出をする上で困難な課題を突きつけるでしょう。さらに、今後は自動車の安全走行にとって重要な部品とシステムの数が増大するにしたがって、リコール件数の増大が予想されます。そして、より重要なことは、社会における安全性への意識の高まりから自動車メーカーが、今まで以上により積極的にリコールを実施すると予想されるという点ではないでしょうか。

 

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